このページの要点
- 提供内容の変更は軽微・運営上・重要に分け、重要な変更は十分な期間をおいて周知し、退会や返金の選択肢を示す。
- 規約の変更は民法548条の4の枠組みで行い、効力発生時期を定めて周知する。会員の何もしないことで新たな支払を生じさせる条項は無効になり得る(消費者契約法10条)。
- 外部サービスの停止・移行は、会員が失うものを先に整理する。終了では通知期間・前払い会費の清算・アーカイブの扱いを決める(民法542条・545条・536条)。
- 運営者の交代は、契約上の地位の移転(民法539条の2)と会員情報の引継ぎ(個人情報保護法18条2項・27条5項2号)を分けて考える。
結論:日々更新されるコミュニティは、「変えてよいこと」「変えるときの手順」「終わるときの清算」を、始める前に決めておく
会員制のコミュニティは、一度作って終わりのサービスではありません。企画が入れ替わり、頻度が変わり、使っているツールが変わり、運営者が忙しくなり、ときには終わりを迎えます。会員は、始まりの時点の約束を信頼して会費を払っています。変更や終了のたびに、会員との約束を新たに結び直す必要があるわけではありませんが、運営者が一方的に変えてよい範囲には限度があります。
このページは、運営者の側から見た「変える」「移る」「終える」「交代する」の四つの局面を扱います。会費の値上げの手続は会費・月額課金と自動更新に、会員が自分の意思でやめる場合は退会・解約と返金に、それぞれ譲ります。ここでは、運営者の側の事情で提供の内容や形が変わるときの会員への伝え方、前払い会費の清算、会員情報の引継ぎに限ります。講座の内容変更や終了、教室の閉鎖、規約変更の一般論は、それぞれ別のガイドが扱っています。
結論を先に並べます。
- 提供内容の変更は、軽微なものと重要なものに分ける。重要なものは、周知の期間を長く取り、会員が退会を選べる余地を残す。
- 規約の変更は、定型約款の変更の枠組み(民法548条の4)で行う。変更が会員の一般の利益に適合するか、契約の目的に反せず変更の必要性・内容の相当性などに照らして合理的であるときに限る。効力発生時期を定め、事前に周知する。
- 「利用を続けたら同意したものとみなす」には限界がある。新しい有料の契約を、会員の何もしないことをもって成立させる条項は、消費者の利益を一方的に害するものとして無効になり得る(消費者契約法10条)。
- 外部サービスの停止や仕様変更を理由とする免責は、運営者の責任をすべて消す形にしない。会員が失うもの(データ、履歴、アーカイブ)を事前に整理し、代替策を示す。
- 終了では、通知の期間、前払い会費の清算、アーカイブの扱いの三つを決める。運営者の事情で提供できなくなる場合の前払い分は、返還の定めが基本になる。
- 運営者の交代や譲渡では、会員の契約と会員情報の引継ぎを分けて考える。契約上の地位の移転には会員の承諾が関わり(民法539条の2)、会員情報の引継ぎには個人情報保護法の整理が関わる。
変更・移行・終了の定めを整える前に、手元に置くもの
- 会員に約束している提供内容の一覧(場、配信するコンテンツ、イベントの頻度、運営者の関与の度合い)と、約束の書かれた場所(規約、申込みの画面、案内ページ)
- 前払いの会費の種類(月額、年額、半年払い)と、会員ごとの支払済みの期間
- 利用している外部サービスの一覧と、それぞれが停止・値上げ・仕様変更になった場合の代替の見通し
- 運営の体制(運営者本人、スタッフ、外部の委託先)と、運営者が長期に不在になったときの代行者の有無
- 現行の規約の、内容変更・規約変更・終了・譲渡に関する条文
提供内容の変更:軽微な変更と重要な変更を分ける
「運営者は、本コミュニティの内容を、予告なく変更することがある」という定めは、多くの規約に見られます。この定めは、運営者の柔軟性を確保する役割を果たしますが、会員が契約の目的としていた中心的な内容まで、運営者が自由に変えられるという意味にはなりません。運営の自由度を保ちつつ、会員の信頼を守るには、変更の種類を分けて書きます。
提供内容の変更の種類と、手順の目安
| 変更の種類 | 例 | 会員への影響 | 周知の方法の目安 |
|---|---|---|---|
| 軽微な変更 | 画面の表示、通知の時刻、投稿欄の名前の変更 | 会員の利用に実質的な影響がない | 変更後の案内で足りる。事前の告知は任意 |
| 運営上の変更 | 企画の入れ替え、イベントの日程の調整、担当者の交代 | 約束した内容の範囲内での調整 | 事前に告知する。既存の約束を実質的に減らさない |
| 重要な変更 | イベントの廃止、配信の頻度の大幅な減少、中心となる機能・場の廃止 | 会員が契約をした目的に関わる | 十分な期間をおいて事前に周知し、退会や返金の選択肢を示す |
| 料金に関わる変更 | 会費の値上げ、有料の範囲の拡大 | 会員の負担に直接関わる | 会費の改定の手続による。同意の取り方を別に決める |
重要な変更に当たるかどうかは、会員が入会を決めた理由に関わります。入会の案内で最も強く打ち出した特徴が、変更の対象になっているなら、重要な変更と見る方向になります。たとえば、案内で「運営者本人が毎週参加する」と謳ったコミュニティで、運営者の参加を減らす、または廃止するなら、運営上の変更では済みません。案内の文言と実際の提供の実態は、常に突き合わせておきます。
書き方の例(一般的な例) 内容の変更に関する条項
変更の範囲
理由「自由に」「予告なく」と書くと、約束した内容の中心まで変えられるように読める。重要な変更だけを事前通知の対象に絞ると、運営の柔軟性と会員の信頼を両立できる。
変更を受け入れない会員
理由変更に同意できない会員の出口を示すと、変更の相当性が補強される。会費の扱いも、あらかじめ決めておく。
規約の変更:定型約款の変更の枠組みと、みなし同意の限界
規約そのものを変更する場合は、民法の定型約款の変更のルールが基本になります。定型約款準備者は、一定の場合に、定型約款の変更をすることで、変更後の条項について合意があったものとみなし、個別に相手方と合意をすることなく契約の内容を変更できます。その場合とは、変更が相手方の一般の利益に適合するときと(民法548条の4第1項1号)、変更が契約をした目的に反せず、かつ、変更の必要性、変更後の内容の相当性、この条の規定により定型約款の変更をすることがある旨の定めの有無とその内容その他の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときです(同項2号)。
手順の面では、変更の効力発生時期を定め、定型約款を変更する旨、変更後の定型約款の内容、効力発生時期を、インターネットの利用その他の適切な方法により周知しなければなりません(同条2項)。1項2号による変更は、効力発生時期が到来するまでに周知をしなければ、効力を生じません(同条3項)。この枠組みで見るかぎり、「規約はいつでも変更できます。変更後の規約は、サイトに掲載した時点で効力を生じます」という定めだけでは、手順の面で不足があります。
規約変更の手順の一例
- 1 変更の内容と理由の整理何を、なぜ変えるのかを整理する。会員の一般の利益に適合する変更か、合理性が必要な変更かを見分ける。
- 2 効力発生時期の決定会員が内容を確認できる期間を見込んで、効力発生日を決める。
- 3 周知変更する旨、変更後の内容、効力発生日を、サイトの掲載とメールなどの適切な方法で知らせる。
- 4 会員の選択の機会変更に同意できない会員が退会できる期間と、その場合の会費の扱いを示す。
- 5 施行と記録効力発生日に新しい規約へ切り替え、変更前の規約と周知の記録を保存する。
周知の方法は、規約に書いた方法と実際の運用が一致している必要があります。メールで周知すると書いたのに、メールが届いていない会員がいると、周知が尽くされたかが問題になります。
規約の変更後も利用を続けた会員は同意したものとみなす、という定めは、実務でよく見られます。変更が定型約款の変更の要件を満たしていれば、同意がなくても変更の効力が生じるので、この定めは補強的な位置づけです。一方で、会員の何もしないことをもって、新たな契約の申込みや承諾をしたものとみなす定めには限界があります。消費者契約法10条は、消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたものとみなす条項その他の、法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又は義務を加重する消費者契約の条項であって、民法1条2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものを無効としています。
この条文の例示のとおり、変更に伴って新しい有料のサービスへの加入を会員に課し、会員が反応しなければ加入したことにする、という設計は、避けるべきです。新しい有料の契約が必要なら、会員の側に選択の機会(申込みの操作)を求める形にします。無料のコミュニティを有料に切り替えるときも同様で、既存の会員の無料の利用を、反応のないまま有料へ移すことはできません。切替の手順は、後の節で述べます。
条文例規約の変更に関する定めの例
- 運営者は、民法第548条の4の規定により、本規約を変更することができる。
- 運営者は、前項の変更を行う場合、効力発生日の○日前までに、変更する旨、変更後の本規約の内容および効力発生日を、本サイト上への掲載および会員に登録されたメールアドレスへの送信により周知する。
- 前項の周知を受けた会員は、変更の効力が生じる前に限り、第○条の定めにより退会することができる。この場合、運営者は、効力発生日以後の期間に対応する会費を、返金または相殺する。
- 運営者は、本規約の変更によって、会員が新たな金銭の支払義務を負うこととなる場合には、会員が当該支払義務に同意する旨の意思表示をした場合に限り、その支払を求める。
書き方の例(一般的な例)です。第4項で、新たな支払義務を、会員の何もしないことでは生じさせない旨を明確にしています。
外部サービスの停止・仕様変更・移行:会員が失うものを先に整理する
会員制コミュニティの多くは、外部のサービスの上で動いています。そのサービスが停止する、料金が上がる、機能が変わる、運営者が別のサービスへ移る。運営者の意思とは関係なく、変更を迫られる場面です。ここで規約が果たす役割は、免責よりも、会員が失うものの整理と、代替策の提示にあります。
移行のときに会員が失い得るものと、事前の整理
| 会員が失い得るもの | 起こる場面 | 運営者が整理すること |
|---|---|---|
| 過去の投稿・会話 | 別のサービスへ移行するとき、書き出しができない場合 | 移行できる範囲と、できない範囲。できない場合の保存の方法 |
| アーカイブの動画・資料 | 保管先の変更、保管期間の満了 | 移行後の閲覧の可否と期間 |
| アカウントとプロフィール | 新しいサービスでの再登録が必要な場合 | 再登録の手順、旧アカウントの扱い、本人確認の方法 |
| 会員の関係(グループ、フォロー) | 仕組みが異なるサービスへ移るとき | 再現できる範囲の案内 |
| 決済の設定 | 決済サービスを変えるとき | 再度の登録の要否、請求が重複しない仕組み |
運営者は、外部サービスの変更を会員に伝えるときに、何が変わり、何が変わらないかを、会員の目線で説明します。会員の側から見ると、運営者の都合で使うツールが変わっても、費用を負担して契約したのは運営者との間のコミュニティの利用です。外部サービスの障害や停止について、運営者は一切責任を負わないという定めは、運営者の債務不履行による損害賠償責任の全部を免除する条項(消費者契約法8条1項1号)として無効になる場合があります。外部サービスに由来する障害のうち、運営者が回避できないものについて、運営者の責任を限定する書き方に留め、その場合の代替策や会費の調整を示すと、効力が争われにくくなります。
移行にあたり、会員の個人データを新しい外部サービスに預けることになります。委託、外国にある事業者の利用、会員への見え方の変化は、会員情報とプライバシーで整理した内容を、移行の都度確認します。利用目的の範囲を超える取扱いになる場合は、本人の同意が必要です(個人情報保護法18条1項)。
書き方の例(一般的な例) 外部サービスの停止・移行に関する定め
免責の範囲
理由責任の限定を、運営者の責めに帰することができない事由に絞り、故意・過失の例外を置く。代替策の案内を努力義務として加え、会員の保護を示す。
移行時の通知
理由「必要に応じて」を、事前通知と通知する内容の列挙に置き換える。移行の混乱を小さくできる。
サービスの終了:通知の期間・前払い会費・アーカイブ
コミュニティを終えるとき、運営者が決めるべきことは三つです。いつ終わるのかを、いつまでに伝えるのか。前払いの会費をどう清算するのか。会員が使っていた資料や過去の投稿を、どう扱うのか。運営者の事情での終了は、会員にとっては、契約した役務が最後まで提供されない事態です。
会費を前払いで受けている場合の清算は、法的な整理が分かれ目になります。月額の会費を、その月の初めに支払う形なら、終了日までの期間は提供され、終了日以後は提供されません。年額や半年払いで、期間の途中で終了するなら、終了後の期間に対応する会費の返還が問題になります。運営者の都合でコミュニティを終えて、役務を提供できなくなる場合、会員は、債務の履行が不能であるときの催告によらない解除(民法542条1項1号)ができる状況にもなり得ます。解除をすると、各当事者は相手方を原状に復させる義務を負い、会員は支払済みの会費のうち提供されなかった分の返還を受けることになります(同法545条1項)。当事者双方の責めに帰することができない事由で履行できなくなった場合には、債権者である会員は反対給付(会費)の履行を拒むことができます(同法536条1項)。
条文の整理は、規約に返還の定めがない場合の考え方で、実際には、規約で返還の方法を定めておくのが基本です。次の表は、終了のときに決めておく事項です。
終了のときに決めておく事項
| 事項 | 決めること | 書き方のポイント |
|---|---|---|
| 終了の通知 | 通知の方法と、終了日の何日前までに通知するか | 重要な変更の周知と同じく、十分な期間を置く。やむを得ない事情による急な終了の場合の扱いも書く |
| 前払い会費の清算 | 終了日以後の期間に対応する会費の返還の計算方法と、返還の時期 | 日割りか月割りか、返還の手数料を差し引くか、返還の方法(元の決済手段への返金など)を決める |
| 入会金 | 終了時の入会金の扱い | 終了が運営者の都合の場合に、入会金を不返還とする定めは、効力が争われやすい。扱いを明記する |
| アーカイブ・資料 | 終了後の閲覧の可否と、ダウンロードの機会 | 閲覧できる最終日、書き出しの方法、終了後の削除時期を示す |
| 会員情報の消去 | 終了後の個人データの保管と消去 | 会費の精算、問い合わせの対応に必要な期間を除き、遅滞なく消去する(個人情報保護法22条) |
| 会員どうしの連絡 | 会員の連絡先の扱い | 運営者は、会員の連絡先を他の会員に提供しない。会員が自分で連絡を取り合う手段を案内するかどうかを決める |
条文例サービスの終了に関する定めの例
- 運営者は、運営者の都合により、本サービスの全部または一部の提供を終了することがある。この場合、運営者は、終了日の○日前までに、会員に通知する。
- 運営者は、前項により本サービスの全部の提供を終了する場合、会員が支払済みの会費のうち、終了日以後の期間に対応する部分を、会員に返還する。返還の方法および時期は、通知において示す。
- 運営者は、終了日以後、会員が本サービスに投稿した内容およびアーカイブを、会員が閲覧できる状態に置かない。ただし、運営者は、終了日の○日前から終了日までの間、会員が自己の投稿を書き出す機会を設ける。
書き方の例(一般的な例)です。通知の期間と返還の範囲を運営者が約束する形にしています。
終了が運営者の都合ではなく、外部の事情(外部サービスの停止、法令の変更、災害)によるときも、会費の清算は避けられません。外部の事情を理由に「返還しない」と書くと、会員の側から見ると、役務が提供されないのに対価だけが残る形になります。外部の事情の場合は、運営者が負担できる範囲(実際に生じた費用を差し引いた額の返還など)を明記するのが、現実的な設計です。
運営者の交代・譲渡・長期の不在:契約と会員情報を分けて引き継ぐ
運営者が、個人から法人へ運営の形を変える、他の運営者にコミュニティを譲る、病気や事情で運営を続けられなくなる。こうした場面では、会員との契約と、会員の情報の二つを、それぞれ引き継ぐ必要があります。
契約の面では、運営者が変わることは、契約の当事者の一方が変わることを意味します。契約の当事者の一方が第三者との間で契約上の地位を譲渡する旨の合意をした場合において、その契約の相手方がその譲渡を承諾したときは、契約上の地位は、その第三者に移転します(民法539条の2)。会員の承諾が関わるため、規約に譲渡の可能性を書いておくことに加えて、実際の譲渡の際は、会員への通知と承諾(または異議を述べる機会)の取り方を決めておくのが実務的です。会員が新しい運営者を望まない場合に、退会して返金を受けられる余地も残しておきます。
会員情報の面では、個人情報保護法の整理が関わります。合併その他の事由により他の個人情報取扱事業者から事業を承継することに伴って個人情報を取得した場合は、あらかじめ本人の同意を得ないで、承継前における当該個人情報の利用目的の達成に必要な範囲を超えて、当該個人情報を取り扱ってはなりません(同法18条2項)。そして、合併その他の事由による事業の承継に伴って個人データが提供される場合は、提供を受ける者は第三者に該当しません(同法27条5項2号)。事業の承継に当たる譲渡であれば、本人の同意なしに会員情報を引き継げる一方、引き継いだ後は、元の利用目的の範囲内で扱う必要があります。コミュニティの一部の機能だけの譲渡や、会員名簿だけの売却は、事業の承継に当たらない可能性があるため、別に検討が必要です。
確認の問いと理由運営者の交代・譲渡の前に確かめること
会員との契約は、新しい運営者に引き継ぐのか、一度終了させて新しく結び直すのか。
引き継ぐなら会員の承諾の取り方が要る。結び直すなら、既存の会費や期間の扱いを会員に示す。
規約に、運営者の交代・譲渡の可能性が書かれているか。
書かれていれば会員への説明の根拠になる。書かれていない場合は、通知の際に丁寧に説明する。
会員情報は、事業の承継として引き継げる範囲か。
事業全体の承継に伴うものか、名簿だけの移転かで評価が変わる。引き継ぐ項目と利用目的を整理する。
新しい運営者は、会員との約束(提供内容、前払い会費)を守れるか。
前払い会費の取扱いは、引き継ぎの条件にする。守れない場合は、返金の選択肢を会員に示す。
運営者が長期に不在になったときの、代行者と連絡手段は決まっているか。
代行者の権限(投稿の管理、通報の対応、会員情報の閲覧)の範囲を決める。権限を与えすぎると、情報管理の問題が出る。
長期の不在は、病気や介護、事業の事情で、ごく普通に起こります。不在中は、投稿の管理が止まり、通報への対応が止まり、会費の請求だけが続く、という状態になりがちです。会費の請求を一時停止できる仕組みや、不在の旨の告知、不在の期間の目安を決めておくと、会員の不満を小さくできます。数か月を超える不在や、再開の見込みが立たない場合は、終了の手順に切り替える判断も必要です。
無料から有料への切替:既存会員への案内と選択の機会
無料で始めたコミュニティを、会員が増えた段階で有料にする。多くの運営者が検討する切替ですが、既存の会員の扱いが論点になります。無料で利用していた会員は、運営者との間に、無料での利用という契約の関係を持っています。これを一方的に有料へ変えることは、新しい契約の締結に当たる性質を持ちます。
無料から有料への切替の手順の一例
- 1 切替の内容の確定有料の範囲(全部か一部か)、会費、切替の時期、無料のまま残す範囲を決める。
- 2 既存会員への案内切替の内容、時期、手続、手続をしなかった場合に何が起こるかを、十分な期間をおいて通知する。
- 3 会員の選択の機会有料に移る会員が、自ら申込みの操作をする仕組みを設ける。反応のない会員を自動的に有料へ移さない。
- 4 移行しない会員の扱い無料の範囲に残る機能、閲覧のみとする範囲、退会の方法を示す。
- 5 有料の会員の表示有料の会員に提供する内容と会費の表示を整え、通信販売の表示に対応する(特定商取引法11条・12条の6)。
切替の前に、無料の範囲に残す機能を決めておくと、移行しない会員の不満を小さくできます。
切替の案内で、最も大切なのは、手続をしなかった場合の結果を明記することです。「何もしなければ無料の範囲に移ります」なのか、「何もしなければ退会扱いになります」なのかで、会員の受け止めが違います。会員の何もしないことをもって有料契約の成立とすることは、先に述べた消費者契約法10条の観点から避けます。
無料のコミュニティの時期に、会員が投稿した内容の扱いも確認します。無料の時期の規約に、投稿の運営者による利用の許諾が書かれていたか、有料化に伴い許諾の範囲を広げるなら、新たな同意が要るか。入会の段階で、無料の期間の規約をどのように会員に示していたかが、判断の材料です。入会の手続の設計は入会申込と承認制と、全体の書類の構成は規約と書類の分け方と合わせて見直します。
起きがちなことと、見直しのチェックリスト
起きがちなこと
- 案内で最も強く打ち出していた特徴(運営者本人の参加、毎週のイベント)を、運営の都合で静かに減らし、会員から「話が違う」と言われる。
- 「規約は予告なく変更できます」とだけ書き、変更の周知も効力発生日も定めないまま、実際に規約を書き換えてしまう。
- 規約の変更に合わせて新しい有料の機能を追加し、反応のなかった会員にも請求を始めてしまう。
- 外部サービスの停止で過去の投稿やアーカイブが見られなくなったが、規約に「一切責任を負わない」と書いてあるため、会員の不満に応えられない。
- 運営を終えることを決めたが、年額で支払済みの会員への返還の方法が決まっておらず、終了の告知が遅れる。
- 運営を他の人に譲るとき、会員名簿だけを渡して、新しい運営者が元の利用目的の範囲を超えて使い始めてしまう。
- 無料のコミュニティを有料にするときに、案内がメール一通で、手続の方法や、何もしなかった場合の扱いが書かれていない。
変更・移行・終了の見直し
- 提供内容の変更を、軽微なもの、運営上のもの、重要なものに分けて、周知の方法を決めているか
- 規約の変更が、民法548条の4の要件と手順(効力発生時期の設定、周知)に沿っているか
- 新たな金銭の支払を、会員の何もしないことで生じさせる形になっていないか
- 外部サービスの停止・移行で会員が失うものを整理し、代替策と責任の範囲を規約に書いているか
- 終了の通知期間、前払い会費の返還の計算方法、アーカイブの扱いが決まっているか
- 運営者の交代・譲渡について、契約上の地位の移転と会員情報の引継ぎを分けて検討しているか
- 運営者が長期に不在になったときの代行者と、会費の請求の一時停止の仕組みがあるか
- 無料から有料への切替で、会員が申込みの操作をする仕組みと、移行しない会員の扱いが決まっているか
よくあるご質問
規約に「予告なく変更できる」と書いてあれば、いつでも変更してよいですか。
そうとは限りません。規約の変更は、民法548条の4の枠組みでは、変更が会員の一般の利益に適合するか、契約の目的に反せず変更の必要性や内容の相当性などに照らして合理的であることが必要で、効力発生時期を定めて、変更する旨と内容を適切な方法で周知しなければなりません。周知をしないまま行った合理性に基づく変更は、効力が生じません。「予告なく」の定めがあっても、この手順が不要になるわけではありません。
規約を変更した後も利用を続けた会員は、同意したとみなしてよいですか。
変更が定型約款の変更の要件を満たしていれば、同意がなくても変更の効力は生じるので、継続利用のみなし同意は補強的な定めです。ただし、新しい有料の契約を、会員の何もしないことをもって成立させる条項は、消費者の利益を一方的に害するものとして無効になり得ます(消費者契約法10条)。新たな支払が生じる変更は、会員の側に申込みの操作を求める形にします。
外部サービスが停止して、アーカイブが見られなくなりました。責任を負いますか。
外部サービスの停止が運営者の責めに帰することができない事由によるものなら、運営者の責任が限定される場合はありますが、全部を免除する条項は、消費者との契約では無効になり得ます(消費者契約法8条1項1号)。アーカイブが契約の主な内容であれば、代替の提供や会費の調整が問題になります。規約に、代替の案内を行う旨と、責任の限定の範囲(運営者に故意または過失がある場合は除く)を書いておくと整理しやすくなります。
年額で払っている会員がいる状態で、コミュニティを終了します。返金は必要ですか。
運営者の都合で、契約した期間の途中で役務を提供できなくなる場合、終了日以後の期間に対応する会費は、返還の対象になるのが基本の考え方です(民法542条1項1号、545条1項、536条1項)。計算方法(日割りか月割りか)、返還の時期と方法、手数料の扱いを、終了の通知の中で示します。規約に返還の定めがあれば、それに従って整理します。
運営をほかの人に引き継ぎたいのですが、会員の名簿は渡してよいですか。
事業の承継に伴って個人データが提供される場合、提供を受ける者は第三者に該当せず、本人の同意なしに引き継げます(個人情報保護法27条5項2号)。ただし、引き継いだ側は、承継前の利用目的の達成に必要な範囲を超えて取り扱ってはなりません(同法18条2項)。名簿だけの移転や、コミュニティの一部の機能だけの譲渡は、事業の承継に当たらない可能性があるため、引き継ぎの形を整理してから会員へ通知します。
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本ページは一般的な情報提供です。個別のコミュニティへの当てはめは、サービスの仕組みや会員との合意の経緯によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索(法令API)で確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 消費者庁 / 個人情報保護委員会