サロン内の営業・紹介・コラボ・会員どうしの取引

会員の内側の関係は、禁止する、会員の自由にする、運営が制度として関わる、の三つに分けて決めます。営業・勧誘の線引き、紹介報酬、提携先の特典の表示までを、条文と書き方の例で整理します。

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「営業・勧誘の禁止」と一行だけ書くと、自己紹介欄の事業紹介まで違反になるのかが分からなくなります。禁じる範囲と許す範囲を同じ条の中に書くところから始めます。

このページの要点

  • 営業・勧誘・宣伝は同じ意味ではない。場所・相手・方法・対価の四つの軸で、禁止の範囲と許す範囲を分ける。
  • 会員間取引を認めるなら、運営は何をしないのかを具体的に書く。運営が決済や「おすすめ」に関わるほど、関与しないとは言い切れない(消費者契約法8条、民法415条・709条)。
  • 会員を増やした人に報酬が出る仕組みは、連鎖販売取引の定義(特定商取引法33条)の要素を一つずつ確かめてから設計する。
  • 提携先の案内で運営が対価を受け取るなら、広告であることが分かる表示にする(景品表示法5条)。引き抜きの禁止は、対象と期間を必要な範囲に絞る(民法90条)。

結論:会員の「内側の関係」は、禁止する・会員の自由にする・運営が制度として関わる、の三つに分けて決める

会員制のコミュニティでは、運営者と会員の関係のほかに、会員と会員の関係が生まれます。仕事を紹介し合う、商品を売り買いする、共同で企画をする、知り合いを誘う。コミュニティの価値の一部はここにありますが、運営者にとっては、いちばん規約に書きにくく、揉めたときに「運営は何をしていたのか」と問われやすい部分でもあります。

このページでは、会員の内側の関係を扱います。入会の入口は入会申込と承認制で、禁止事項の一般的な書き方と削除の手順は禁止事項・投稿削除・通報の運用で、それぞれ詳しく扱っています。ここでは、そこで「営業・勧誘の禁止」と一行で済ませがちな部分を、実際の場面に分けて掘り下げます。なお、投資や副業の勧誘を主題とするコミュニティに特有の規制、ファンクラブの会員規約は、それぞれ別のガイドの主題で、このページでは触れません。

結論を先に並べます。

  • 会員どうしの関係は、「禁止」「会員の自由」「運営が関与」の三つのどれに置くかを先に決める。規約の禁止事項は、この選択の結果として書く。選ばないまま「営業・勧誘の禁止」とだけ書くと、自己紹介欄での事業紹介のような日常の行為まで違反になるのか分からなくなる。
  • 営業・勧誘・宣伝は、同じ意味ではない。どこで、誰に、どんな方法で、対価を伴うかの四つの軸で、禁止する範囲と許す範囲を分ける。
  • 会員どうしの取引を認めるなら、運営は何をしないのかを具体的に書く。「当事者間で解決する」と書くだけでは、運営が場や決済に関わっているときに、関与していないとは言い切れない。
  • 会員を増やした人に報酬や特典が出る仕組みは、連鎖販売取引の定義(特定商取引法33条)に当たる場合がある。設計の前に、定義の要素を一つずつ確かめる。
  • 提携先やスポンサーの特典を運営が勧めるときは、広告であることが分かる表示にする。景品表示法5条の枠組みで、責任を負うのは広告主である事業者である。
  • 運営の「おすすめ」「認定」という言葉は、運営自身の表示として責任が残る。会員間のトラブルの免責では、運営自身の落ち度までは免れない。

内側の関係を決める前に、手元に置くもの

  • 現在のコミュニティで、会員が実際にしている営業・紹介・取引の例(自己紹介の投稿、仕事の依頼、物の売買、勉強会の共同開催など)を、場所別に書き出したもの
  • 運営が会員に紹介している外部のサービス・事業者・講師の一覧と、運営が対価を受け取っているかどうか
  • 運営が会員を増やすために設けている特典・割引・ポイントの一覧
  • 会員どうしの金銭のやり取りに運営が関わっている箇所(決済、預かり、代理受領)の有無
  • 現行の規約・ガイドラインの、営業・勧誘・宣伝・取引・紹介に関係する条文

営業・勧誘・宣伝を分けて考える:四つの軸で線を引く

規約の禁止事項には、「営業」「勧誘」「宣伝」「広告」「販売活動」といった語が並ぶことがよくあります。これらは重なりますが、同じではありません。営業は自分の商品やサービスを売ろうとする働きかけ、勧誘は特定の行為(入会、購入、参加、契約)をするよう誘うこと、宣伝は広く知らせること、というように、働きかけの向きが違います。語を並べるだけで済ませると、会員は何をしてよいのか判断できず、運営も「どこからが違反か」を説明できません。

線引きは、次の四つの軸で考えると整理しやすくなります。

線引きの四つの軸

場所

どの場で行われるか

  • 全員が見る公開の場か、少人数の場か
  • ダイレクトメッセージのように、運営が見えない場か
  • 告知専用など、運営が用意した場所か

相手

誰に向けられるか

  • 全会員に向けたものか、特定の会員に個別に向けたものか
  • 入会間もない会員を狙い撃ちしていないか

方法

どんな手段か

  • 投稿か、個別の連絡か、外部ページへの誘導か
  • 繰り返しの連絡や、断られた後の再勧誘

対価

金銭の動きがあるか

  • 無償の情報提供か、有償の商品・サービスの案内か
  • 紹介した側に報酬が入るか

四つの軸のうち、どれを重く見るかで禁止の線は変わります。たとえば「方法」と「相手」を重く見るなら、公開の場での事業紹介は許し、個別の連絡での売り込みだけを禁じる設計になります。

具体的な場面で、禁止寄りの設計と許容寄りの設計を比べると、規約に何を書くべきかが見えてきます。

場面ごとの設計の比べ方(一般的な整理)

場面禁止寄りの設計許容寄りの設計決めておくこと
自己紹介の中での事業紹介事業の宣伝は書かないプロフィールや自己紹介の投稿では、事業内容を書いてよい許す場所と書いてよい範囲(連絡先、料金表示など)
告知用の場所での案内会員による告知は認めない運営が用意した告知用の場所に限り認める投稿できる回数、運営の事前確認の有無、削除の基準
ダイレクトメッセージでの売り込み会員への個別の営業は一律に禁止相手が望んだ場合に限り認める「望んだ」ことの確かめ方、断られた後の扱い
外部のグループやサービスへの誘導外部への誘導は禁止運営が許可した場合に限り認める許可の手続、禁止する誘導先の例
会員への紹介を依頼する行為紹介の依頼は禁止依頼は認めるが、報酬の約束は禁止報酬を伴う紹介の扱い(後述の紹介報酬の節)

表の最後の列にあるとおり、禁止寄りにするか許容寄りにするかは、規約の文言を書く前に決める事項です。決めたことを、会員向けの文書に「何をしてよく、何をしてはいけないか」の形で見えるように書きます。

書き方の例(一般的な例) 営業・勧誘の禁止条項

禁止の対象

よくある書き方本コミュニティ内において、営業、勧誘、宣伝その他これらに類する行為を行ってはならない。
整えた書き方会員は、他の会員に対し、本コミュニティの趣旨と関係のない商品・サービスの購入、契約、入会その他の行為を、個別の連絡によって勧めてはならない。自己紹介および運営者が指定する場所への投稿における自己の事業の紹介は、この限りでない。

理由「類する行為」を広く取ると、自己紹介の事業紹介まで違反になり得る。何を禁じ、何を許すかを同じ条の中で示すと、会員は判断でき、運営は削除の理由を説明しやすい。

運営の判断の置き方

よくある書き方運営者が不適切と判断した投稿は、事前の通知なく削除することができる。
整えた書き方運営者は、前項に反する投稿を発見した場合、その投稿を削除することができる。削除をした場合、運営者は、会員に対し、削除した旨を通知する。ただし、通知が相当でない場合はこの限りでない。

理由「不適切と判断した」だけの基準は、会員の側から見ると予測できない。禁止事項の違反を理由とする削除と、運営の裁量による削除は、別々に書くほうが、後の説明が簡単になる。

禁止の基準が広く、運営者の判断だけで決まる形になっていると、規約全体の効力が問題になることがあります。定型約款の個別の条項は、相手方の権利を制限し、または義務を加重する条項で、取引の態様と社会通念に照らして信義誠実の原則(民法1条2項)に反して相手方の利益を一方的に害するものについては、合意をしなかったものとみなされます(民法548条の2第2項)。消費者との契約では、消費者の利益を一方的に害する条項が無効とされる枠組みもあります(消費者契約法10条)。運営者が広い裁量を持つこと自体が直ちに無効になるわけではありませんが、裁量の範囲と手順を条文に出しておくほうが、運営者にとっても安全です。

条文例営業・勧誘に関する定めの例

  1. 会員は、他の会員に対し、本コミュニティの趣旨と関係のない商品、サービス、権利その他のものの購入、契約、入会その他の行為を、個別の連絡によって勧めてはならない。ただし、相手方があらかじめ求めた場合はこの限りでない。
  2. 会員は、自己の事業の紹介を、プロフィール欄および運営者が指定する場所において行うことができる。この場合において、会員は、事実と異なる内容または誤解を与える内容を表示してはならない。
  3. 運営者は、前二項に反する行為があると認めるときは、当該行為の中止を求め、または投稿を削除することができる。

書き方の例(一般的な例)です。許す範囲を第2項で明示している点が、禁止だけを書く形との違いです。

会員どうしの仕事の受発注・商品の販売・コラボレーション

共通の関心や職種でつながるコミュニティでは、会員どうしの取引が自然に起きます。仕事を頼む、デザインや文章を依頼する、手作りの物を売る、共同で講座を開く。運営者が決めるのは、これを認めるかどうかと、認めるなら運営がどこまで関わるかです。関わり方は、おおまかに三つに分かれます。

運営の関わり方の三つの型

関知しない型

場だけを提供し、取引には関わらない

  • 取引の成立・条件・履行は会員どうしの責任
  • 運営は紛争の調停をしない
  • 取引を目的とした入会を禁じる設計と相性がよい

場の整備型

依頼や募集の投稿欄を用意する

  • 投稿のルール(掲載できる内容、禁止する取引)を運営が定める
  • 取引そのものには関わらない
  • 通報の窓口を置くことが多い

仲介・決済関与型

運営が申込み、決済、預かりに関わる

  • 運営が手数料を受け取ることがある
  • 代金の流れに関わるため、運営自身の責任が大きい
  • 「関与しない」とは書きにくい

関わりが深いほど、「当事者間の問題」と整理できる範囲は狭くなります。自分の運営がどの型かを、規約の文言を書く前に確かめます。

「会員間の取引は当事者間で解決し、運営者は責任を負わない」という定めは、多くの規約に見られます。この定めが意味を持つのは、運営者が取引の当事者でも仲介者でもない範囲に限られます。会員どうしの取引で生じた損害を、当事者でない運営者が賠償する理由は通常ありません。反対に、運営者が「審査済み」「安心して依頼できる」と表示した、決済の預かりを運営が行っている、といった事情があるときは、運営者自身の債務不履行(民法415条)や不法行為(民法709条)の問題が別に出てきます。免責の文言は、運営者自身の責任を消すものではなく、他人の責任を運営が引き受けないと確認するものだと位置づけると、書き方が定まります。

消費者契約法8条1項は、事業者の債務不履行や、債務の履行に際しての不法行為による損害賠償責任の全部を免除する条項、またはその責任の有無を事業者が決定する条項を、無効としています。会員が個人の消費者であるときには、「運営者はいかなる場合も責任を負わない」という書き方は、この点で問題になります。会員間のトラブルについての免責は、「会員間の取引そのものから生じた損害」に絞って書き、運営者自身の故意または過失による場合は例外にしておく書き方が、実務でよく見られます。

書き方の例(一般的な例) 会員間取引についての定め

免責の範囲

よくある書き方会員間のトラブルについて、運営者は一切の責任を負わない。
整えた書き方会員間の取引、共同の企画その他会員どうしの関係から生じた紛争は、当事者間で解決するものとし、運営者は当該取引の当事者となるものではない。ただし、運営者の故意または過失による場合は、この限りでない。

理由運営者が負わない責任を「会員間の関係から生じた紛争」に絞り、運営者自身の責任が残る場合を明示すると、免責条項全体が無効と判断されるおそれが小さくなる。

取引を目的とする入会

よくある書き方(定めなし)
整えた書き方会員は、他の会員との取引を主たる目的として本コミュニティに入会してはならない。運営者は、この定めに反するおそれがある場合、入会の承認を取り消し、または会員資格を停止することができる。

理由取引目的の入会は、コミュニティの趣旨から外れて他の会員の不満を生みやすい。入会の段階で趣旨を伝えるとともに、規約上の根拠を置いておく。

会員どうしの取引で起きがちな揉め事は、納品されない、代金が支払われない、成果物の権利が曖昧、取引の中で知った情報が外に出る、の四つに集約されます。運営者が個別の取引に介入しない設計でも、会員が取引条件を文書で残すことを促す一文をガイドラインに置いておくと、その後の通報の対応が楽になります。成果物の権利の扱いは、会員が自分で取り決める事項ですが、会員の投稿としてコミュニティ内に出した場合の扱いは会員の投稿の権利で整理しています。

会員が事業者として商品やサービスを売る場合、その会員自身に通信販売の表示義務(特定商取引法11条)が生じることがあります。誰が「販売業者」または「役務提供事業者」に当たるかは、申込みを受ける主体や代金を受け取る主体など、仕組みによって決まります。運営者が申込み画面を用意し、運営者の名で代金を受け取る形にすると、運営者自身の側の表示の問題(特定商取引法12条の6)も出てきます。仕組みを決めるときは、誰が申込みを受けるのか、誰が代金を受け取るのかを、まず図にして確かめます。

確認の問いと理由会員間取引を認める前に運営者が自分に問うこと

  1. 取引の申込み、代金の受領、契約書の交付のうち、運営者が関わっている部分はあるか。

    関わる部分があるほど、運営者自身の表示と責任が問題になる。関わらないなら、関わらないことを規約と運用の両方で一致させる。

  2. 運営者が「おすすめ」「認定」「審査済み」と表示している会員や事業者はあるか。

    表示の内容と実際に確認した内容が違うと、運営者自身の表示として責任が残る。

  3. 取引で紛争が起きたとき、運営者は事実確認を行うのか、行わないのか。

    行うなら手順と記録の仕組みを置く。行わないなら、通報への返信の文面を決めておく。

  4. 会員が事業者として売る場合の表示は、誰が責任を持つのか。

    販売業者として表示するのは会員自身であることを、会員向けのガイドラインに書いておく。

紹介報酬・紹介特典と、連鎖販売取引の入口

会員を増やしたい運営者が最初に考えるのは、紹介の仕組みです。紹介された人が割引を受ける、紹介した人にポイントが付く、紹介の成立で金銭が支払われる。仕組みの重さは段階的に違い、重くなるほど、特定商取引法の連鎖販売取引の定義が視野に入ってきます。このページは、当たるか当たらないかの判断基準を示すものではありません。定義の中身を知り、設計の前に確かめる事項を整理するための入口です。

紹介の仕組みの型

紹介された側への割引

紹介コードで入会すると、入会する側が割引を受ける

  • 紹介者に金銭や特典が出ない形が基本
  • 割引の条件と期間を表示する

紹介した側への特典

紹介が成立すると、紹介者の会費が割引になる、ポイントが付く

  • 紹介者に利益が出る
  • 景品類にあたる場合は、提供の範囲に制限が及ぶことがある(景品表示法4条)

紹介報酬

紹介が成立すると、紹介者に金銭が支払われる

  • 報酬の出どころが、紹介された人の会費かどうかが重要
  • 報酬の額と条件を書面で明確にする

多段階の報酬

紹介した人が、さらに紹介した人の分でも報酬を得る

  • 連鎖販売取引の定義との距離が最も近い
  • 設計の前に条文の要素を一つずつ確かめる

特定商取引法33条1項は、連鎖販売業を、物品の販売(そのあっせんを含む)または有償で行う役務の提供(そのあっせんを含む)の事業であって、次の三つの要素を備えるものとして定義しています。

  1. 商品の再販売、受託販売、販売のあっせんをする者、または同種の役務の提供やそのあっせんをする者を相手にすること。
  2. その者を、特定利益(その商品の再販売等をする他の者や、同種役務の提供等をする他の者が提供する取引料その他の主務省令で定める要件に該当する利益の全部または一部)を収受し得ることをもって誘引すること。
  3. その者と、特定負担(商品の購入、役務の対価の支払、または取引料の提供)を伴う取引をすること。

同条3項は、取引料を「取引料、加盟料、保証金その他いかなる名義をもつてするかを問わず、取引をするに際し、又は取引条件を変更するに際し提供される金品」と定義しています。会員制のコミュニティでは、月額の会費や入会金が役務の対価や取引料に当たり得ます。そのうえで、会員が他の会員を勧誘して会員にし、勧誘された会員が払う会費などから勧誘した会員に利益が出る形になっているなら、定義の要素に近づきます。ここで大事なのは、名称が「紹介プログラム」「パートナー制度」「アンバサダー」であっても、定義への当てはめは実質で行われることです。名前を変えて避けられるものではありません。

連鎖販売取引に当たる場合には、勧誘に先立つ氏名等の明示(同法33条の2)、不実の告知や威迫などの禁止行為(同法34条)、契約を締結する際の書面の交付(同法37条)、契約の解除(同法40条)といった、取引の入口から出口までの規制が及びます。条文の名称だけを挙げましたが、いずれも運営の実務に重く響く内容です。当たるかどうかが分からない段階では、まず、次の問いに答えられるかを確かめます。

確認の問いと理由紹介の仕組みを設計する前の確認の問い

  1. 紹介者は会員だけか、外部の協力者も含むか。

    紹介者が会員であり、同時に会費を払う側でもある形は、特定負担と特定利益の組み合わせの確認が要る。

  2. 紹介者への報酬は、運営の収益から出るのか、紹介された人の会費から出るのか。

    報酬が、紹介された人が払った金銭に連動して決まる形は、特定利益の定義に近づく。

  3. 報酬を受け取るために、紹介者自身も会費を払い続ける必要があるか。

    利益を得る条件として本人の負担が付いている形は、特定負担を伴う取引との距離が近い。

  4. 紹介された人がさらに人を紹介したとき、最初の紹介者にも報酬が出るか。

    多段階の報酬は、連鎖販売取引の典型として最も議論になりやすい。

  5. 紹介の勧誘をするとき、会員は何を伝えなければならないと定めるか。

    勧誘の際の氏名・目的・商品の明示は、当たる場合の義務に関わる。当たらない場合でも、誤解を与える説明を禁じる定めを置く。

当たるかどうかの判断そのものは、仕組みの全体と実態を条文に当てはめて行います。このページの問いは、判断の前に整理しておく材料です。

紹介の仕組みを置かない選択もあります。紹介を会員の自由な口コミにとどめ、報酬も特典も出さない設計です。この場合は、規約に「会員は、金銭その他の対価を約束して、他の会員に紹介を求めてはならない」旨を置いておくと、運営の外側で報酬付きの勧誘が広がりにくくなります。外側での勧誘の広がりを放置すると、運営者が知らないところで、会員どうしが連鎖販売取引に近い関係を作ることがあり、コミュニティの評価に響きます。

提携先・スポンサーの特典と、運営の「おすすめ」の表示

コミュニティの運営が成熟すると、提携先やスポンサーが現れます。会員限定の割引、提携先サービスの紹介、スポンサー付きの企画、運営が提携先から紹介料を受け取って会員に勧める形。ここで運営者が守るのは、広告であることを会員に分かる形で示すことです。

景品表示法5条は、事業者が自己の供給する商品または役務の取引について、優良誤認(1号)、有利誤認(2号)に当たる表示のほか、取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示で内閣総理大臣が指定するもの(3号)を禁止しています。3号の指定のひとつが、令和5年10月1日から運用されている、一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示、いわゆるステルスマーケティングです。消費者庁の解説によれば、規制の対象となるのは商品・サービスを供給する事業者(広告主)で、広告であるのに広告であることが分からない表示が問題とされます。インフルエンサーなどの第三者そのものは規制の対象とはならない、とされています。

この枠組みは、会員制コミュニティの運営にも関係します。運営者が提携先の商品やサービスを会員に勧める投稿をし、その見返りに提携先から対価を受け取っているなら、それは運営者が関わる広告として扱われるかどうかの確認が要ります。会員限定の場であっても、表示の内容と態様によっては、対象となり得ます。広告であることを明示する方法としては、投稿の冒頭に「広告」「提携先の案内」と分かる語を置く、紹介料を受け取っていることを併記する、などの工夫があります。

条文例提携先の案内に関する定めの例

  1. 運営者は、提携先の商品、サービスその他のものを会員に案内する場合において、当該提携先から対価その他の利益を受け取るときは、案内にその旨を表示する。
  2. 運営者は、提携先の案内の内容について、事実と異なる表示、または実際のものより著しく優良もしくは有利であると誤認されるおそれのある表示をしない。
  3. 会員が提携先の特典を利用して提携先と取引をする場合、その取引は会員と提携先との間のものとし、運営者は、当該取引の当事者とならない。ただし、運営者の故意または過失による場合は、この限りでない。

書き方の例(一般的な例)です。第1項で「対価を受け取る場合の表示」を運営者自身の約束にしておくと、会員への説明と実際の運用を一致させやすくなります。

特典の内容も確認の対象です。提携先の割引を「会員だけの特別価格」と案内するなら、実際に会員以外には提供されない価格でなければなりません。割引の期間や数量に限りがあるのに、限りがないように読める表示は、有利誤認(景品表示法5条2号)の問題を生じ得ます。提携先の商品の効果をコミュニティ内で語るときも、運営者が自分の経験として語る場合と、提携先の説明をそのまま伝える場合とで、表示の責任の置き場所が違います。

スポンサー付きの企画も同様です。スポンサーが費用を負担し、運営が企画を運営する場合に、会員への告知で「運営の企画」とだけ書くと、スポンサーの存在が見えません。企画の告知に、共催または協賛の関係を示す一文を入れるのが基本です。会員から得た参加者の情報をスポンサーに渡す場合には、個人情報の第三者提供の問題が別に出ます(個人情報保護法27条)。これは会員情報とプライバシーで扱います。

書き方の例(一般的な例) 提携先・スポンサーの特典の書き方

運営の収益の表示

よくある書き方会員限定の特別なご案内です。ぜひご利用ください。
整えた書き方【提携先のご案内】運営者は、この案内に関して提携先から紹介料を受け取ります。内容は提携先が提供する情報にもとづきます。

理由運営が対価を受け取るなら、その旨を案内の冒頭に置く。会員は、案内が運営の独自の評価か、提携先の広告かを判別できる。

特典の条件

よくある書き方会員は常にお得な価格でご利用いただけます。
整えた書き方会員価格は、提携先が定める期間・数量の範囲内で適用されます。期間・数量・適用条件は、案内ページに表示します。

理由「常に」「いつでも」の表現は、期間や数量に限りがあると実際と食い違う。条件は案内の側に載せ、規約には案内ページに従う旨を置く。

引き抜き・競業・外部への誘導

営業の禁止とは別に、運営者が気にするのが、会員を他の有料コミュニティや講座へ移す行為です。会員を一定の目的で別の場に誘う、自分の運営する別のグループへ勧誘する、運営者の講師や講座の会員リストを持ち出して連絡する。これらは営業・勧誘の一種ですが、運営の存続に関わるため、規約では独立した禁止事項として書いておくのが一般的です。

書き方の要点は三つです。第一に、対象を「コミュニティの運営と同種または類似のサービス」への誘導に絞る。広く書くと、会員が他の学びの場を紹介することまで禁じてしまいます。第二に、手段を「コミュニティ内で知り得た他の会員の連絡先を利用する」「コミュニティ内の投稿や個別の連絡で行う」など、禁止の対象を行為として特定する。第三に、禁止が及ぶ期間を、在籍中に限るか、退会後も一定期間とするかを決める。退会後の制限は、範囲が広すぎると公序良俗に反するとして効力が否定されることがあるため(民法90条)、必要な範囲に絞ります。

書き方の例(一般的な例) 引き抜き行為の禁止条項

対象と手段

よくある書き方会員は、他の会員を他のコミュニティに勧誘してはならない。
整えた書き方会員は、本コミュニティで知り得た他の会員の連絡先その他の情報を用いて、本コミュニティと同種または類似のサービスへの入会、参加または購入を、当該他の会員に勧めてはならない。

理由禁止の中心は、コミュニティで知った情報を使った誘導にある。対象を絞ると、会員が自分の判断で他の学びの場を紹介することまで禁じる不自然さを避けられる。

運営側の誘導

よくある書き方(定めなし)
整えた書き方運営者は、本コミュニティの会員に対し、運営者が提供する別のサービスを案内することがある。この場合、運営者は、会員がその案内を受け取るかどうかを選択できる方法を設ける。

理由会員に営業を禁じる一方で、運営が別のサービスを際限なく案内すると、会員の信頼を損ねる。運営側の案内にも、会員が選べる仕組みを置く。

運営者自身が自社の上位のサービスへ会員を案内することは、会員にとっては営業と同じように受け止められます。禁止の定めを会員に課すなら、運営側の案内にも節度のルールを持つと、禁止事項が一方的に見えません。この点は、会員が退会したくなる理由に直結するため、退会・解約と返金のページで述べる退会の条件とあわせて、全体のバランスを見直すとよいでしょう。

「おすすめ」「認定」の責任と、免責の限界

運営者がコミュニティ内で、特定の会員を「認定メンバー」として紹介する、外部の専門家を「おすすめ」として案内する、取引の相手として「信頼できる」と推薦する。こうした表示は、コミュニティの価値を高める一方で、運営者自身の表示としての責任を伴います。

責任の中身は、表示と実際の食い違いです。運営者が会員に「審査済み」と伝えたのなら、審査の中身と深さが、会員が受け取る印象と合っていなければなりません。実際には自己申告を受け付けただけなのに、運営者が確かめたかのような表示になっていれば、その食い違いが問題になります。逆に、推薦の根拠が限定的であるなら、その限定を表示に含めれば足ります。たとえば「会員の自己申告にもとづく紹介であり、運営者は内容を確認していません」と書くのは、誠実な整理です。

このページで使った条文の要点メモ(e-Govで確認した条)

  • 特定商取引法 33条1項・3項連鎖販売業の定義(特定利益、特定負担、取引料の定義を含む)。本文の三つの要素の出典。
  • 特定商取引法 33条の2・34条・37条・40条連鎖販売取引における氏名等の明示、禁止行為、書面の交付、契約の解除。当たる場合の規制の名称。
  • 特定商取引法 11条・12条の6通信販売の広告の表示事項、申込みを受ける際の表示。会員が事業者として売る場合や運営が申込み画面を設ける場合に関係。
  • 景品表示法 4条・5条4条は景品類の制限及び禁止。5条は優良誤認・有利誤認・指定される表示(3号)の禁止。
  • 消費者契約法 8条1項・10条事業者の損害賠償責任を免除する条項の無効、消費者の利益を一方的に害する条項の無効。
  • 民法 1条2項・90条・415条・548条の2第2項・709条信義則、公序良俗、債務不履行による損害賠償、定型約款の不当条項のみなし合意不成立、不法行為による損害賠償。

会員間のトラブルに運営が関わるかどうかの線は、規約に書いた線と、実際の運用の線が一致している必要があります。規約には「運営は関与しない」と書きながら、実際には通報を受けて当事者の間に入り、片方に謝罪を求めているなら、運営の関与の実態は規約と食い違います。食い違いが大きいほど、「関与しない」という定めへの信頼は薄れます。関与しないと決めたなら、通報への定型の返信(「当事者間でご確認ください。運営は取引の当事者ではありません」)を用意し、例外的に関与する場合の条件(法令違反の疑いがある、コミュニティの秩序を乱す行為である、など)も規約に置いておきます。会員資格に対する措置の組み立ては警告・利用停止・除名で、具体的な通報の対応は規約トラブルとよくある質問で整理しています。

起きがちなことと、見直しのチェックリスト

起きがちなこと

  • 「営業・勧誘の禁止」と書いてあるのに、自己紹介の事業紹介が日常的に許されており、ある日突然一人の会員の投稿だけが削除されて不公平だと言われる。
  • 運営が提携先の商品を会員に勧めるとき、紹介料を受け取っていることを書かず、後から会員に「広告だったのか」と受け止められて信頼を損なう。
  • 紹介した人にポイントが付く仕組みを、紹介された人がさらに紹介すると上の人にも付く形に広げているうちに、連鎖販売取引の定義との距離が近づいていることに気づかない。
  • 会員間の取引で代金の未払いが起き、運営が「当事者間の問題」と返したところ、運営が「認定メンバー」として紹介していた事実を指摘される。
  • 会員が運営の会員名簿の連絡先を使って別のコミュニティへ誘い、規約に連絡先の利用目的の限定が書かれておらず、対処できない。
  • 退会した元会員が、在籍中に知った会員の連絡先に営業を続け、禁止が在籍中に限られている規約では止められない。
  • 運営が会員に上位のサービスを繰り返し案内し、会員が「営業を禁じておきながら運営は営業している」と感じて退会する。

営業・紹介・取引・提携の規約の見直し

  • 営業・勧誘・宣伝を分け、許す場所と禁じる方法を、同じ条の中で示しているか
  • 会員間の取引について、運営の関わり方(関知しない/場の整備/仲介・決済関与)が一つに決まっているか
  • 「当事者間で解決する」の定めが、運営自身の責任を消す形になっていないか(故意・過失の例外があるか)
  • 紹介の仕組みがある場合、紹介者と紹介された人の間の金銭の流れを図にし、報酬の出どころを確かめたか
  • 提携先・スポンサーの案内に、対価の受領の有無と、案内の根拠を表示しているか
  • 引き抜きの禁止が、在籍中の行為と退会後の行為に分けて書かれ、範囲が必要な限度に絞られているか
  • 「おすすめ」「認定」の表示と、実際に行った確認の内容が一致しているか
  • 会員への通報の返信文と、運営が例外的に関与する条件が決まっているか

よくあるご質問

会員が自己紹介の中で自分の事業を紹介することも、営業として禁止すべきですか。

禁止すべきかどうかは、コミュニティの趣旨によります。仕事のつながりを生みたいコミュニティなら、自己紹介やプロフィールでの事業紹介は許し、個別の連絡での売り込みを禁じる設計が一般的です。どちらの設計でも、規約には許す範囲と禁じる範囲を同じ条の中で示します。「営業の禁止」とだけ書くと、自己紹介の事業紹介まで違反になるのかが会員に分かりません。

会員どうしの取引で揉めたとき、運営者には責任がありますか。

運営者が取引の当事者でも仲介者でもない範囲では、会員間の取引から生じた損害を運営者が負う理由は通常ありません。ただし、運営者が「審査済み」「おすすめ」と表示していたり、決済の預かりに関わっていたりするときは、運営者自身の債務不履行(民法415条)や不法行為(民法709条)が別に問題になります。免責の定めは、他人の責任を引き受けないという範囲にとどめ、運営者自身の故意・過失は例外にしておきます。

会員を紹介してくれた人に報酬を支払う仕組みは、法律上問題になりますか。

紹介の仕組みの全体が、特定商取引法33条1項の連鎖販売業の定義(特定利益を収受し得ることをもって誘引し、特定負担を伴う取引をすること)に当たるかどうかで変わります。当たるかどうかは、報酬の出どころ、紹介者自身の負担、報酬が段階的に広がる構造などを、条文に当てはめて確かめる必要があります。名称が「紹介プログラム」であっても、実質で判断されます。設計の前に、報酬の出どころと紹介者の負担を図にして確かめることから始めます。

提携先の商品を会員に勧めて紹介料をもらうとき、何を表示すればよいですか。

景品表示法5条の枠組みでは、広告であるのに広告であることが分からない表示が問題とされます(消費者庁の解説による、令和5年10月1日からの運用)。紹介料を受け取るなら、案内の冒頭に「提携先のご案内」「紹介料を受け取ります」など、運営者が対価を受け取っている旨を表示するのが基本です。表示の場所は、会員が最初に目にする位置に置き、提携先の効果の説明を運営者の評価のように見せないようにします。

退会した元会員が、在籍中に知った会員に営業を続けています。止める方法はありますか。

規約に、コミュニティで知り得た他の会員の連絡先の利用を禁じ、その禁止が退会後も一定期間続く旨が書かれていれば、それを根拠に中止を求められます。ただし、退会後の制限が広すぎると公序良俗(民法90条)に反して効力が否定されることがあるため、対象を「コミュニティで知り得た連絡先の利用」「同種サービスへの誘導」に絞り、期間も必要な範囲にとどめておく必要があります。規約に定めがない場合は、ほかの会員に対する迷惑行為として個別の事実に即して整理することになります。

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本ページは一般的な情報提供です。個別のコミュニティへの当てはめは、サービスの仕組みや会員との合意の経緯によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索(法令API)で確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 消費者庁 / 個人情報保護委員会

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