このページの要点
- 会員情報を三つの層(全会員に見える/一部/運営だけ)に分け、利用目的をできる限り特定し、申込みフォームの近くで明示する(個人情報保護法17条・21条)。
- プロフィールの公開範囲は会員が選べる設計にし、画面の表示と規約を一致させる。参加者名簿を会員に見せるのは第三者提供にあたり得る(同法27条1項)。
- ダイレクトメッセージを運営が確認するなら、場面・担当者・目的を限定して先に示す。共通の悩みで集まる場は、要配慮個人情報の取得に注意する(同法2条3項・20条2項)。
- 外部ツールは委託・第三者提供・外国にある事業者の整理を行い(同法25条・27条・28条)、スタッフの権限を役割で分け、退会後の保管の目的と期間を決める(同法22条・23条・24条)。
結論:会員情報は「会員どうしに見える情報」と「運営だけが見る情報」を分けて、段階ごとに目的と見せ方を決める
会員制のコミュニティは、会員の情報が集まる場です。氏名やニックネーム、メールアドレス、決済に関する情報のほかに、プロフィール欄の自己紹介、投稿の内容、ダイレクトメッセージ、参加した集まりの履歴、閲覧や反応の記録が溜まっていきます。しかも、その一部は運営者だけでなく、他の会員にも見えます。運営者の個人情報の取扱いが、一般のサービスより一段複雑になるのは、このためです。
一般的なアプリやサービスのプライバシーポリシーの書き方は、別のガイドが扱っています。このページは、会員制コミュニティに固有の論点に絞ります。誰に、どの情報が、どこまで見えるのか。運営者はダイレクトメッセージを見ることがあるのか。共通の悩みや属性で集まる場で、投稿に機微な情報が含まれるときに運営者は何をすべきか。運営スタッフ、外部のチャットツール、クラウドの保管場所の扱い。そして、退会した後に情報はどうなるのか。個人情報保護法の条文と、会員向けの文書の書き方を結びつけて整理します。
結論を先に並べます。
- 情報を三つの層に分ける。全会員に見える情報、一部の会員にだけ見える情報、運営者だけが見る情報。層ごとに、利用目的と見せ方を決め、会員が自分の見え方を選べる範囲を決める。
- 利用目的は、できる限り特定し、取得する場面で示す。申込みフォームなど、書面(電磁的記録を含む)で本人から直接情報を取得するときは、あらかじめ利用目的を明示する(個人情報保護法17条、21条2項)。
- プロフィールの公開範囲は、運営者が一方的に決めない。実名かニックネームか、メンバーリストに載るか、検索で見つかるかを、会員自身が選べる設計にして、規約に書く。
- 運営者がダイレクトメッセージの内容を確認することがあるなら、場面と担当者を限定して、事前に会員へ示す。確認しないと決める選択もある。仕組みによっては、通信の秘密(電気通信事業法4条)の問題が出る。
- 共通の悩みや属性で集まるコミュニティは、要配慮個人情報(同法2条3項)の入口に立つ。運営者が意図せず取得することがないよう、入会時の質問と投稿の運用を設計する。
- 外部のツールとスタッフは、安全管理と監督の対象。権限を分け、外部への提供や外国にある事業者の利用は、条文に沿って整理する(同法23条〜25条、27条、28条)。
会員情報の規約を整える前に、手元に置くもの
- 会員から取得している情報の一覧(入会時の項目、決済に関する情報、プロフィール、投稿、ダイレクトメッセージ、参加履歴、閲覧や反応の記録)
- 各情報を、全会員に見せているか、一部にだけ見せているか、運営だけが見ているか
- 運営に関わる人の一覧(運営者本人、スタッフ、モデレーター、外部の委託先)と、それぞれが見られる情報の範囲
- 使っている外部のサービス(連絡ツール、会議ツール、会員管理、決済、クラウドの保管場所)と、その提供者の所在国
- 現在のプライバシーポリシーと、入会時に会員が同意する内容の表示
取得項目と利用目的:会員に見せる情報と、運営だけが見る情報を分ける
個人情報保護法は、個人情報取扱事業者に、利用の目的をできる限り特定することを求めています(同法17条1項)。利用目的を変更する場合は、変更前の目的と関連性を有すると合理的に認められる範囲を超えてはなりません(同条2項)。目的の達成に必要な範囲を超えて個人情報を取り扱うには、あらかじめ本人の同意が必要です(同法18条1項)。
取得のときの伝え方は、取得の方法で決まります。個人情報を取得した場合は、あらかじめ利用目的を公表している場合を除き、速やかに利用目的を本人に通知し、または公表します(同法21条1項)。そのうえで、本人との契約の締結に伴って契約書その他の書面(電磁的記録を含む)に記載された本人の個人情報を取得する場合その他、本人から直接書面に記載された個人情報を取得する場合は、あらかじめ、本人に利用目的を明示しなければなりません(同条2項)。コミュニティへの入会申込みフォームに会員が入力する情報は、この「直接書面(電磁的記録を含む)に記載された情報」にあたる典型です。フォームの近くに、利用目的を表示しておきます。
会員情報の三つの層と、決めること
| 層 | 例 | 決めること | 規約・案内に書くこと |
|---|---|---|---|
| 全会員に見える情報 | ニックネーム、アイコン、自己紹介、公開の投稿 | 表示する項目、変更や非表示の方法、退会後の表示 | 見える範囲と、会員が選べる設定の内容 |
| 一部の会員にだけ見える情報 | 特定のグループ内の投稿、少人数の集まりの参加者名簿 | グループの参加者に何を見せるか、参加者名簿の共有の可否 | グループ内の情報を外へ出さない約束、名簿の利用目的 |
| 運営だけが見る情報 | 氏名、連絡先、決済の記録、申込み時の回答、通報の記録 | 見る人の範囲、保管の期間、利用目的 | 利用目的の列挙、第三者への提供の有無、保管の期間 |
表の中でいちばん注意が要るのは、一部の会員にだけ見える情報の層です。参加者名簿を会員に見せることは、個人データを他の会員という第三者に提供することにあたり得ます。個人データは、法令に基づく場合などを除き、あらかじめ本人の同意を得ないで、第三者に提供してはなりません(同法27条1項)。コミュニティの性質上、他の会員から見えることを前提に入会するとしても、何が見えるのかは、本人が分かる形で示し、できる限り本人が設定で選べるようにします。「入会した時点で、プロフィールの公開に同意したものとみなす」と書くだけでは、見える範囲が会員に伝わったとは言いにくい場面があります。
プロフィールの公開範囲:実名・ニックネーム・メンバーリスト・検索・退会後
プロフィールの設計は、コミュニティの性質で変わります。仕事のつながりを生むコミュニティでは、実名や所属、連絡先が見えるほうが価値が上がります。相談や悩みを話す場では、匿名のニックネームのほうが安心して発言できます。どちらに寄せても、運営者が決めるのは次の五つです。
- 実名かニックネームか。入会時に実名の登録を求めるのか、表示だけをニックネームにするのか。実名を登録させて運営だけが見る形も、会員に見える形も、利用目的が異なる。
- プロフィールの項目。写真、所属、居住地域、年代、自己紹介のうち、必須の項目と任意の項目を分ける。任意の項目は、書かなくても会員資格に影響がないことを示す。
- メンバーリスト。全会員が会員の一覧を見られるのか、検索でしか見つからないのか、参加するグループの中だけなのか。
- 外部からの見え方。会員でない人や検索エンジンから、プロフィールや投稿が見えるのかどうか。
- 退会後の表示。退会した会員の過去の投稿やプロフィールが、残るのか、匿名化されるのか、消えるのか。
書き方の例(一般的な例) プロフィールの公開範囲の書き方
見える範囲
理由見える項目と見えない項目を分けて書き、会員が選べる設定を示す。会員は、入会前に自分の情報がどう見えるかを予想できる。
退会後の表示
理由退会後に何が残り、残った情報がどう見えるかを示す。投稿そのものの権利は、会員の投稿の権利のページの整理と合わせて決める。
設計が定まったら、実際の画面と規約が一致しているかを確かめます。規約では「ニックネームだけが表示されます」と書いているのに、投稿の署名に氏名の一部が出る、投稿の通知メールに会員の実名が表示される、といった食い違いは、運営者が意図しない公開になります。画面の表示、通知、検索の結果、書き出しファイルの表示を、会員の目線で一度通して確かめます。入会時にどの項目を取得し、承認の段階で何を確認するかは入会申込と承認制で扱っているので、入会の画面とあわせて見直します。
ダイレクトメッセージ・チャットを運営が確認するとき
会員どうしのダイレクトメッセージは、会員にとって私的な連絡の場です。通報や紛争の調査、嫌がらせの確認のために、運営者が内容を確認する場面が出てきます。確認することがあるのか、ないのかを決め、あるなら、どんな場面で、誰が、どの範囲で確認するかを、会員に先に示しておくことが基本です。
確認の問いと理由ダイレクトメッセージの確認について決める事項
運営者は、ダイレクトメッセージの内容を確認することがあるか。
確認しないと決める選択もある。確認しないなら、通報があった場合は、通報者が提供した画面の記録などで対応する。確認するなら、規約に場面を限定して書く。
確認するのは、どんな場面か。
通報があった場合、法令違反の疑いがある場合、規約違反の調査のため、といった限定を置く。場面を限定せず「必要に応じて」とだけ書くと、会員の安心感を損なう。
確認できるのは誰か。
運営者本人に限る、特定の担当者に限る、など。スタッフ全員が見られる設計は避ける。
確認したことは、当事者に伝えるか。
調査の目的を損なうおそれがある場合は伝えない運用もあり得るが、事後に伝える方針の有無を決めておく。
確認した記録は、どこまで保管するか。
調査の記録は、措置の理由を説明するために必要な範囲で保管し、不要になれば消去する。
電気通信事業法4条1項は、電気通信事業者の取扱中に係る通信の秘密は侵してはならない、と定めています。電気通信事業は、電気通信役務(他人の通信を媒介し、その他電気通信設備を他人の通信の用に供すること)を他人の需要に応ずるために提供する事業をいいます(同法2条)。会員どうしのダイレクトメッセージを運営者が仲介する仕組みが、この定義に当たるのか、当たるとして登録や届出(同法9条など)が必要か、通信の秘密の保護がどう及ぶかは、サービスの仕組みによります。このページでは、条文の入口を示すにとどめ、当てはめはしません。
通信の秘密の規制が及ばない仕組みであっても、会員のメッセージの内容を運営者が見ることは、会員の信頼に直結します。同意なく覗き見られたと感じた会員は、コミュニティを離れるだけでなく、運営の対応を外に語ります。規約に確認の可能性を書く、ガイドラインに確認の手順を書く、通報への返信に確認した旨を書く。これらは、法的な義務の有無にかかわらず、運営の誠実さを示す手段になります。通報を受けた後の措置の組み立ては警告・利用停止・除名で、削除と通報の窓口は禁止事項・投稿削除・通報の運用で整理しています。
条文例ダイレクトメッセージの確認に関する定めの例
- 運営者は、会員間のダイレクトメッセージの内容を、通常は確認しない。
- 運営者は、会員から前項のダイレクトメッセージについて通報を受けた場合であって、法令に違反し、または他の会員の安全を害するおそれがあると認めるときは、運営者が指定する担当者に限り、その内容を、調査に必要な範囲で確認することができる。
- 運営者は、前項により確認した内容を、調査および措置の目的以外に利用しない。運営者は、当該内容を、調査の終了後、不要になった時点で消去する。
書き方の例(一般的な例)です。確認する場面、確認者、利用の目的、消去を、同じ条に置いています。
共通の悩みや属性で集まる場:要配慮個人情報の入口
共通の関心だけでなく、共通の悩みや事情で集まるコミュニティがあります。そうした場では、会員が自己紹介や相談の投稿の中で、自分の健康、家族の事情、過去の出来事に触れることがあります。個人情報保護法には、取扱いに特に配慮を要する情報を「要配慮個人情報」として扱う仕組みがあります。
同法2条3項は、要配慮個人情報を、本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実その他本人に対する不当な差別、偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要するものとして政令で定める記述等が含まれる個人情報としています。そして同法20条2項は、法令に基づく場合などを除き、あらかじめ本人の同意を得ないで、要配慮個人情報を取得してはならないと定めます。
会員が自分で投稿した内容を、運営者がどのように「取得」したことになるのかは、運営の仕組みによって評価が分かれ得ます。ただ、運営者が入会時のアンケートで病歴や過去の経験を尋ねる、運営者が会員の相談の内容を整理して名簿のように保管する、といった場面は、運営者が要配慮個人情報を取得していると評価される可能性が高まります。設計の方向としては、次の三つが考えられます。
要配慮個人情報への向き合い方
尋ねない設計
入会時の質問や登録項目に、要配慮個人情報に当たり得る事項を入れない
- 運営者が自ら取得する場面を減らす
- 会員が自分で書いた投稿は、投稿のルールで扱う
書かせない・残さない設計
投稿ガイドラインで、他人の情報や機微な情報を書き込まない旨を定める
- 他の会員の情報を書き込むことを禁じる
- 不適切な投稿は削除し、記録に残さない
同意を得て取得する設計
特定の目的で取得する必要があるときは、同意を取ってから取得する
- 取得する項目と利用目的を示す
- 同意の取り方と撤回の方法を決める
どの設計でも、運営者が取得した情報の安全管理が問題になります。権限と保管の仕組みは、後の節で扱います。
他の会員の情報を投稿に書く行為は、運営者にとって別の悩みを生みます。たとえば、会員が自分の家族や職場の同僚の事情を、本人の同意なく投稿するケースです。投稿の保証と責任は投稿の権利で整理しますが、情報の扱いの観点では、他人の個人情報を同意なく投稿しない旨をガイドラインに置き、通報があれば削除する手順を決めておくことが必要です。
外部ツール・クラウド・外国にある事業者:提供と委託の整理
会員制コミュニティの運営は、多くの外部サービスに支えられています。連絡のためのチャットツール、オンライン会議、会員管理や決済のサービス、データを保管するクラウド。会員の情報がこれらのサービスに入るとき、運営者から外部への「提供」なのか「委託」なのかで、整理が変わります。
個人情報保護法27条5項は、一定の場合に、個人データの提供を受ける者が、第三者に該当しないものとしています。そのひとつが、利用目的の達成に必要な範囲内で個人データの取扱いの全部または一部を委託することに伴って個人データが提供される場合です(同項1号)。会員管理のサービスに会員の名簿を預けて処理してもらうような場面は、委託に整理できる場合があります。委託をする場合、運営者は、委託先に対して必要かつ適切な監督を行う必要があります(同法25条)。
サービスの提供者が外国にある場合は、さらに別の条文が関わります。個人情報取扱事業者は、外国にある第三者に個人データを提供する場合には、一定の例外を除き、あらかじめ外国にある第三者への提供を認める旨の本人の同意を得なければなりません(同法28条1項)。同意を得るときには、当該外国における個人情報の保護に関する制度、当該第三者が講ずる個人情報の保護のための措置その他本人に参考となるべき情報を、あらかじめ本人に提供する必要があります(同条2項)。外国にある事業者のクラウドやツールを使っている運営者は、サービスの提供者の所在や、データを保管する場所を確認したうえで、この条文に沿った整理を行います。個人情報保護委員会は、通則編のほか、外国にある第三者への提供編のガイドラインを公表しており、整理の際の参照資料になります。
外部サービスの使い方と、確認すること
| 使い方 | 整理の方向 | 確認すること |
|---|---|---|
| 会員の名簿を預けて処理してもらう | 委託として整理できる場合がある(同法27条5項1号) | 委託先との契約、委託先への監督の方法(同法25条) |
| 会員の発言や連絡先を外部のチャットツールで扱う | ツールの提供者が個人データを取り扱うかどうかで整理が分かれる | ツールの利用規約の内容、提供者の所在国、データの保管場所 |
| 外国にある事業者のサービスを使う | 外国にある第三者への提供の整理が必要になり得る(同法28条) | 同意の取得、情報提供の内容、相当措置の有無 |
| 提携先・スポンサーに会員情報を渡す | 第三者提供にあたり、あらかじめ本人の同意が原則(同法27条1項) | 提供する項目、提供先、目的を示した同意の取得 |
| 運営を他の運営者に引き継ぐ | 事業の承継に伴う提供は第三者に当たらない場合がある(同法27条5項2号) | 承継前の利用目的の範囲内で取り扱うこと(同法18条2項) |
最後の行は、運営者の交代や譲渡の場面です。承継の手順と会員への周知は内容変更・移行・終了・運営者交代で整理します。
運営スタッフの権限分けと、退会後・保存の扱い
権限分けと安全管理
運営が一人から数人に広がると、会員情報にアクセスできる人が増えます。個人情報取扱事業者は、取り扱う個人データの漏えい、滅失または毀損の防止その他の安全管理のために必要かつ適切な措置を講じる必要があります(同法23条)。従業者に個人データを取り扱わせるときは、安全管理が図られるよう、必要かつ適切な監督を行います(同法24条)。
具体的な設計は、会員制コミュニティの規模と運営体制で変わりますが、基本は権限の分離です。すべての運営スタッフに、全会員の氏名と連絡先と決済の記録を見せる必要はありません。モデレーター(投稿の確認と削除を担当する人)には、投稿とニックネームの管理に必要な権限だけを渡し、決済の記録は担当者に限る。ダイレクトメッセージの確認は、前に述べたとおり、指定する担当者に限る。権限は、役割に応じて付け、役割を外れたら外します。
スタッフの権限の段階の例
- 投稿の確認・削除を担当する投稿とニックネーム、通報の内容を見る記録:いつ、どの投稿を、なぜ削除したか
- 会員対応を担当するニックネームに加え、連絡先と、問い合わせの履歴を見る記録:問い合わせの対応内容と、連絡先を確認した日
- 会員情報の管理を担当する氏名、連絡先、プロフィール全体、入会の申込み内容を見る記録:情報の閲覧・更新・書き出しの日時と担当者
- 決済・会計を担当する決済の記録を見る。会員の投稿の内容は見ない記録:決済の記録の閲覧・書き出しの日時と担当者
上の段ほど軽く、下の段ほど見られる情報が重くなります。段ごとに、見た記録を残します。
漏えいなどの事態のうち、個人の権利利益を害するおそれが大きいものとして個人情報保護委員会規則が定める類型に当たるときは、同委員会への報告と本人への通知が必要になります(同法26条)。会員のメールアドレスの一覧を、誤って関係のない第三者に送信した、という間違いも、状況によっては対象の検討が必要になります。起きたときに慌てないよう、誰が、何を確認し、誰に連絡するかを、あらかじめ決めておきます。
保存・退会後・開示の請求
個人データは、利用目的の達成に必要な範囲で正確かつ最新に保ち、使う必要がなくなったら遅滞なく消去するよう努めることが求められます(同法22条)。退会した会員の情報を、いつまで、何の目的で保管するのかを、運営者は決めておく必要があります。
書き方の例(一般的な例) 退会後の情報の扱い
保管の期間
理由保管の目的と、期間の考え方を示すと、消去の努力義務(同法22条)に沿った運用になる。具体的な期間は、運営者が目的に応じて決める。
投稿・ダイレクトメッセージ
理由退会後に残るものと、その形(匿名化など)を示す。会員が何が残るのかを退会前に知ることができる。
会員から、自分の情報の開示を求められることもあります。本人は、個人情報取扱事業者に対し、当該本人が識別される保有個人データの電磁的記録の提供による方法その他の個人情報保護委員会規則で定める方法による開示を請求できます(同法33条)。運営者は、請求の窓口と本人確認の方法を決めておきます。請求を受けたときの対応は規約トラブルとよくある質問の視点とあわせて準備しておくと、運営者の負担が小さくなります。
このページで使った条文の要点メモ(e-Govで確認した条)
- 個人情報保護法 2条3項要配慮個人情報の定義(人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実など)。
- 個人情報保護法 17条・18条・21条利用目的の特定、利用目的による制限(事業承継の場合を含む)、取得に際しての利用目的の通知等(書面で直接取得するときの明示を含む)。
- 個人情報保護法 20条・22条適正な取得(要配慮個人情報は原則として本人の同意が必要)、データ内容の正確性の確保等(不要になったデータの消去の努力義務)。
- 個人情報保護法 23条〜26条安全管理措置、従業者の監督、委託先の監督、漏えい等の報告等。
- 個人情報保護法 27条・28条・33条第三者提供の制限(委託・事業承継・共同利用は第三者に該当しない場合)、外国にある第三者への提供の制限、開示。
- 電気通信事業法 2条・4条・9条電気通信役務・電気通信事業の定義、通信の秘密の保護、電気通信事業の登録。
起きがちなことと、見直しのチェックリスト
起きがちなこと
- 規約には「ニックネームのみ表示」と書いたのに、通知メールや投稿の署名に実名の一部が出ていて、会員から指摘される。
- 入会フォームの利用目的の表示が、サイトの片隅のプライバシーポリシーへのリンクだけで、フォームの近くには何も書かれていない。
- 運営者が通報の調査のために、ダイレクトメッセージを担当者以外のスタッフにも見せてしまい、会員に知られて信頼を失う。
- 入会のアンケートで、会員の健康状態や過去の経験を詳しく尋ね、その回答を名簿のように保管している。
- 無料のチャットツールにそのまま会員の連絡先を入力し、そのツールが外国の事業者のサービスで、保管場所が分からない。
- 運営スタッフの全員が、全会員の氏名・連絡先・決済の記録を見られる管理画面を共有している。
- 退会した会員の情報がいつまでも消えず、会員から削除を求められたときの手順が決まっていない。
会員情報の規約の見直し
- 会員情報を三つの層(全会員に見える/一部/運営だけ)に分け、層ごとに利用目的と見せ方を決めているか
- 申込みフォームの近くで、利用目的を明示しているか
- プロフィールの公開範囲を会員が選べる設計にし、画面の表示と規約の記載が一致しているか
- ダイレクトメッセージを確認する場面、担当者、利用目的、消去の方針が決まっているか
- 要配慮個人情報に当たり得る事項を、入会時に尋ねていないか。尋ねる必要があるときは、同意の取り方が決まっているか
- 外部のサービスについて、委託・第三者提供・外国にある事業者への提供の整理ができているか
- スタッフの権限が役割ごとに分かれ、閲覧の記録が残る仕組みがあるか
- 退会後に保管する情報と、保管の期間、消去の方法が決まっているか
よくあるご質問
会員のプロフィールを、他の会員に見せるのに同意は必要ですか。
会員の氏名や連絡先を他の会員に見せることは、個人データの第三者への提供にあたり得るため、あらかじめ本人の同意を得るのが原則です(個人情報保護法27条1項)。入会時の規約で見える項目と範囲を具体的に示し、会員が設定で選べる形にしておくと、同意の内容が明確になります。「入会により公開に同意したものとみなす」だけでは、見える範囲が会員に伝わったとは言いにくい場面があります。
運営者は、会員どうしのダイレクトメッセージを読んでもよいですか。
読むかどうかは運営者が決めますが、読むなら、場面、担当者、目的を限定し、事前に規約へ書いておくのが基本です。サービスの仕組みによっては、通信の秘密(電気通信事業法4条)の問題も生じ得ます。確認しないと決め、通報の際に通報者が提供する画面の記録で対応する選択もあります。
共通の悩みで集まるコミュニティで、入会時にどんな質問をしてよいですか。
病歴などの要配慮個人情報に当たり得る事項は、あらかじめ本人の同意を得ないで取得してはなりません(個人情報保護法20条2項)。入会時の質問は、コミュニティの運営に必要な最小限にとどめ、機微な事項を尋ねる必要があるときは、取得する項目と利用目的を示した同意を取ります。尋ねない設計も有力な選択肢です。
外国の事業者のチャットツールを使っています。何を確認すべきですか。
運営者が会員の個人データをそのツールに入力する場合、外国にある第三者への提供(個人情報保護法28条)に当たる可能性を確認します。ツールの提供者の所在、データを保管する国、提供者が講じる保護措置の内容を調べ、必要な場合は本人の同意と情報提供を行います。個人情報保護委員会が公表している「外国にある第三者への提供編」のガイドラインが整理の参考になります。
退会した会員から、情報の削除を求められました。応じる必要がありますか。
利用する必要がなくなった個人データは、遅滞なく消去するよう努める義務があります(個人情報保護法22条)。一方、会費の精算、問い合わせの対応、紛争の処理など、保管を続ける必要がある目的がある間は、その範囲で保管できます。保管の目的と期間を、退会前に会員が知ることができるように規約に示しておくと、削除を求められたときの説明が簡単になります。
あわせて読みたいページ
本ページは一般的な情報提供です。個別のコミュニティへの当てはめは、サービスの仕組みや会員との合意の経緯によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索(法令API)で確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 消費者庁 / 個人情報保護委員会